COLUMN 税務情報コラム

消費税について

暮らしの中でもっとも身近な税金である消費税。
しかし、事業者・法人にとって消費税に関する決まり事は実に多くあります。

POINT ポイント

以下にご案内する義務や課税制度、方式などは、必ず確認するようにしましょう。

POINT

TYPE 種別

  • 【消費税の領収書などの保管義務】
    領収書などの保管義務は法人税や所得税にもありますが、領収書がなければすべて否認されるというわけではなく、支払い金額、支払い日、支払先の住所・氏名、支払い理由などの内容が確認できる場合には否認されることはあまりありません。
    しかし、一つひとつの取引について処理を行う消費税については、領収書などの保存と取引の記帳がされていないと、経費の支払いがないものとして扱われ、消費税の計算の際に課税仕入れに入れることができず、余計な消費税を払うことになってしまいます。消費税では、記帳・記録保存が要件とされているため保存がないものについてはすべて否認されてしまいます。
    そのため領収書を保存するだけでなく、提出を求められたときにすぐに探せるようにきちんとした方法で保存しておくことが必要です。
  • 【消費税の課税事業者】
    2年前の売上高が1,000万円を超えている場合すべての事業者は、消費税の課税事業者に該当します。
    また、特定期間の課税売上が1,000万円を超え、かつ同期間の給与支給額が1,000万円を超える場合には、2年後ではなく翌期から課税事業者に該当します。
    ※特定期間とは前期の期首から6ヶ月の期間(個人の場合1~6月まで)

    (例1)
    1期目が法人設立から初年度決算まで8ヶ月で売上800万円の場合
    800万円×12月/8ヶ月=
    1,200万円
    1期目の売上が800万円だからといって安心はできません。
    12ヶ月に換算すると1,200万円となり、2年後から課税事業者になることになります。

    (例2)
    前期の期首から6ヶ月の売上が1,000万円を超え、かつ給与支給額も1,000万円を超える場合、2年後ではなくその翌年から課税事業者なります(新規設立法人の場合は特定期間の計算が少し変わります)。
    法人設立や事業開始時から、売上や給与などの見積もりができる場合は、消費税の課税事業者になるタイミングを考慮して、法人設立の時期や決算期などを考えることも可能になります。
    また、個人事業の場合は、法人化のタイミングの判断にも活用できます。
  • 【原則課税と簡易課税】
    原則課税とは、原則的な計算方法で税額を計算する方法です(「売上にかかる消費税」-「仕入れにかかる消費税」=消費税納税額)。
    簡易課税とは、事務負担軽減を考慮して設けられた簡易な計算方法で消費税額を計算する方法です。具体的には、事業者の事業を6種類に区分し、その区分ごとに「みなし仕入率」を定めて、課税売上高にみなし仕入率を乗じたものを仕入控除税額とします。
    つまり、課税売上高さえ計算すれば納税額が計算できるのです。

    (例)
    課税売上高:1,500万円
    (消費税額150万円)
    小売業(みなし仕入率80%)
    売上消費税(150万円)-仕入消費税(150万円×80%)=
    納税額(30万円)

    (注意点)
    簡易課税の適用を受けられるのは、基準期間の課税売上高が5,000万円以下で「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した場合です。
    届出書は適用する事業年度の開始前に提出しなければなりません。
    事業年度が終わった後に、どちらか有利かを吟味して選択できるわけではありませんので、最低でも2年先までの経営計画を立てることが重要になっていきます。その判断によっては納税額が大きく変わりますので、判断は慎重に行わなくてはいけません。
    また、この届出書を提出した場合、最低2年は原則課税に戻せません。
    さらに、簡易課税から原則課税に戻す場合は「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出する必要があります。
    課税売上高が5,000万円以下の事業者の場合は、将来の売上がどれくらいか、仕入れや資産購入といった予定をシミュレーションし、原則課税と簡易課税のどちらの方法が有利か判断する必要があります。
  • 【消費税課税事業者選択届出】
    消費税の課税事業者になるためには、2年前の基準期間が1,000万円になることの他に、以下に該当する場合は自動的に課税事業者になります。

    ①新規設立法人で、資本金または
    出資金の総額が1,000万円以上の場合
    ②消費税の課税事業者選択届出を提出する場合

    開業初年度などで売上が少ないのに開業資金などの設備投資が大きいと、売上にかかる消費税より仕入れにかかる消費税の方が多くなることがあります。
    また、既存の事業者の中にも、設備投資や建物の購入や建て替えなどにより、その年だけ課税仕入れが多くなることがあります。
    そのような場合には、消費税の還付を受けることが可能です。
    ただし、一度提出すると2年間は取りやめをすることも、簡易課税に変更することもできないため、1期目に還付を受けても2期目に納付をすることになり、結果的にメリットを得られないということもあるため、よく検討するようにしましょう。
  • 【適格請求書保存方式(インボイス制度)】
    2023年10月1日より適用開始され、課税事業者は「適格請求書発行事業者」の登録をすることになります。
    「適格請求書発行事業者」が発行する請求書だけが、課税仕入れの適用を受けられるようになる制度で、言い換えればそれ以外の請求書は仕入れにかかる税額控除を受けられないということです。
    そのため免税事業者については、取引先などから取引をしてもらえないなど不利な状況に陥る可能性があります。
    適格請求書を発行するためには、事業者番号・取引内容・税率・消費税額などをすべて記載する必要があり、事務作業量も膨大です。
    さらに、このインボイス制度の導入により消費税申告業務はより複雑になり、計算方法も大きく変わります。
    今まで消費税は関係ないと思われていた個人事業者やフリーランスで事業をやっていた方にとっても無視できない税金になっていくのです。
    消費税は身近な税目ですが、数年先のことを考えなくてはいけない難しい税目です。

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